訪問販売や電話勧誘販売など,消費者にとって不意打ちとなる取引について,消費者に熟慮期間を与え,一定期間「頭を冷やして契約から離脱する(cooling-off)」ための無条件解除を認める制度です。
どのような取引の場合にクーリング・オフが可能であるかどうかについては,特定商取引法などで定められています。
特定商取引法では,以下の取引の場合にクーリング・オフが可能であるとされています。
特定商取引法に定めのある商取引のうち,「通信販売」の場合は,クーリング・オフができません。
「訪問販売」に当たるのは次の2つの要件をいずれも充たす場合です。
典型的な例は,いきなり自宅に営業に来た人から物やサービスを購入させられてしまった場合ですが,それに限られません。
ただし,以下の場合には,訪問販売に当たりません。
訪問販売の場合,クーリング・オフ期間は,法定の契約書面が交付された日から8日間です。
法律によって定められた厳格な記載内容が一部でも欠けている場合,契約書面の交付がなかったものとされ,クーリング・オフ期間は進行しません。
「電話勧誘販売」に当たるのは次の3つの要件をいずれも充たす場合です。
典型的な例は,営業の電話を受けて,電話で物やサービスを購入申込みをした場合です。
電話勧誘販売の場合,クーリング・オフ期間は,法定の契約書面が交付された日から8日間です。
法律によって定められた厳格な記載内容が一部でも欠けている場合に,クーリング・オフ期間が進行しないのは,訪問販売の場合と同様です。
「連鎖販売取引」に当たるのは次の5つの要件をいずれも充たす場合です。
要するに,マルチ商法を規制するための規定です。
連鎖販売取引の場合,クーリング・オフ期間は,法定の契約書面が交付された日から20日間です。
法律によって定められた厳格な記載内容が一部でも欠けている場合に,クーリング・オフ期間が進行しないのは,訪問販売や電話勧誘販売の場合と同様です。
連鎖販売取引の場合,いつでも理由なく中途解約することが認められています。また,中途解約した場合の違約金の上限は,法律によって規制されています。
「特定継続的役務提供」に当たる取引は政令で指定されている以下の6業種のみです。
特定継続的役務提供の場合,クーリング・オフ期間は,法定の契約書面が交付された日から8日間です。
法律によって定められた厳格な記載内容が一部でも欠けている場合に,クーリング・オフ期間が進行しないのは,訪問販売・電話勧誘販売・連鎖販売取引の場合と同様です。
特定継続的役務提供の場合,いつでも理由なく中途解約することが認められています。また,中途解約した場合の違約金の上限は,法律によって規制されています。
特定継続的役務提供契約の際に購入する必要があるとして販売されることが多い商品(「関連商品」といいます)の内,政令で指定されているものについては,クーリング・オフや中途解約の際に,役務提供契約と関連商品売買契約が一体のものとして取り扱われます。
例えば,エステティックサービスの関連商品には化粧品や健康食品などが,語学指導・学習塾・家庭教師の関連商品には書籍や教材などが,パソコン教室の関連商品にはパソコンなどが,結婚相手紹介サービスの関連商品には宝石などがあります。
「業務提供誘引販売取引」とは下記1~3の要件を全て充たすもので,いわゆるサイドビジネス商法,内職商法,モニター商法を対象とするものです。
例えば,ホームページ作成の在宅ワークをあっせんするとしてホームページ作成ソフトを販売する場合や,モニター料を支払うとして布団を販売する場合などが業務提供誘引販売取引に当たります。
最近では,アフィリエイトやドロップシッピングなどインターネットを利用した副業による儲け話をもちかけ,高額の手数料やシステム利用料を請求するものが見られます。
業務提供誘引販売取引の場合,クーリング・オフ期間は,法定の契約書面が交付された日から20日間です。
法律によって定められた厳格な記載内容が一部でも欠けている場合に,クーリング・オフ期間が進行しないのは,訪問販売・電話勧誘販売・連鎖販売取引・特定継続的役務提供の場合と同様です。
多くの悪質商法において,クレジットや各種決済の仕組みが悪用されることが多いため,消費者被害の救済のためには,クレジット契約や各種決済の仕組みを理解することが必要となります。
クレジット契約を契約主体によって分類した場合,
の3種類に分類することができます。
「自社方式」とは,いわゆる自社割賦のことです。
消費者と販売会社の2者間契約となります。
「三者型」には,「信用購入あっせん」と「ローン提携販売」があります。
「三者型」の場合,消費者と販売会社との間の商品売買契約と共に,消費者とクレジット会社との間で代金立替払契約が締結され,クレジット会社から販売会社に対して代金の立替払いが行われます。
このうち,販売業者がクレジット会社に対して代金の連帯保証を行うのが「ローン提携販売」,連帯保証を行わない場合が「信用購入あっせん」です。
「四者型」には,「提携ローン」があります(割賦販売法上は「信用購入あっせん」に当たるものとして取り扱われます)。
提携ローンの場合,消費者が商品購入代金を金融機関から借り入れるに際し,クレジット会社がその債務を連帯保証した上で融資金を販売業者に送金します。消費者が割賦金の支払いを延滞した場合には,クレジット会社が代位弁済をした上で,消費者に対して求償請求をすることになります。消費者から見ると,クレジット会社が連帯保証することで,金融機関からの融資の利率を低く抑えることができるというメリットがあります。
クレジット契約を契約方式によって分類した場合,
の2種類に分類することができます。
「個別式」とは,商品購入のつど契約書が作成されるクレジット契約のことです。割賦販売法における「個別信用購入あっせん」に当たります。。
「包括式」は,簡単に言うとクレジットカードによる取引のことです。割賦販売法における「包括信用購入あっせん」に当たります。
クレジット契約を支払方法によって分類した場合,
などの種類に分類することができます。
「割賦払い」とは,簡単に言うと「分割払い」のことです。
広い意味では,1回払い以外の全ての支払方法が含まれますが,割賦販売法上の「割賦販売」には,「2ヶ月以上かつ3回以上」の分割払いのみが当たります。一方,「信用購入あっせん」には,「2ヶ月以上の与信」が全て含まれます。
「リボルビング方式」とは,簡単に言うと「毎月定額払い」のことです(実際には,「定額式」のほかに「定率式」もあります)。「分割払い」が支払回数に着目する(○回払い)のに対し,リボルビング方式の場合は,月々の支払額に着目する点が異なります。
「マンスリークリア方式」とは,上記のいずれにも当てはまらない「翌月1回払い」を意味します。割賦販売法による規制対象となっていないことから,悪質商法においてはマンスリークリア方式がよく用いられます。
クレジットカードの決済方式は,
の3種類に大きく分類することができます。
クレジットカード決済の仕組みを理解するためには,カード発行業務を行うイシュアー,加盟店との加盟店契約締結業務を行うアクワイアラー,加盟店(販売業者),顧客の四者間の取引関係であることを理解する必要があります(イシュアーとアクワイアラーが同一の会社である場合には三者間の取引関係となります)。
「オンアス式」とは,カード発行会社(イシュアー)が直接的に加盟店契約を結んでいる販売業者等と決済する方式です。
「ノンオンアス式」は,VISAやMasterCardなどの国際カードブランドを通じて提携関係のある別のカード会社(アクワイアラー)との間で加盟店契約を結んでいる販売業者等と決済する方式です。顧客が利用するクレジットカード会社と直接的な取引関係のない加盟店でもクレジットカードを利用できるのは,このノンオンアス方式によって決済されているためです。
「決済代行介在型」は,アクワイアラーの包括加盟店(決済代行業者)を通じて,販売業者等と決済する方式です。近時,審査の甘い海外のアクワイアラーと契約している決済代行業者が増加しており,カード会社との間で直接的な加盟店契約を結べない悪質業者は,決済代行業者と加盟店契約を結ぶことで被害者とクレジット決済を行っています。
商品売買契約や役務提供契約等とクレジット契約とは,形式上,別個の当事者間における別個の契約ですので,本来,商品売買契約や役務提供契約等の効力に問題が生じても,クレジット契約の効力には影響しないはずです。
しかし,そのような状態を放置すると,クレジット契約が悪質商法によって悪用されることになりかねません。
そこで,昭和59年の割賦販売法改正によって導入されたのが,「抗弁の対抗」という制度です。
「抗弁の対抗」とは,販売業者や役務提供業者等に対して生じている抗弁事由(無効,取消,解除など)をクレジット業者の支払請求に対して対抗できるという制度です。
多くのクレジット業者では,顧客が「抗弁の対抗」を主張する場合に必要な書式を準備しています。
もっとも,「抗弁の対抗」制度のみでは,クレジット会社に対して既に支払ってしまったお金(既払い金)の返還を請求することまではできません。
平成20年割賦販売法改正により,一定の場合には既にクレジット会社に対して支払ってしまった既払い金の返還を請求することができるようになりました。
既払い金返還請求ができるのは,次の全ての条件を充たす場合です。
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