遺言は,法律上定められた所定の方式にしたがって作成されたものだけが有効となります。
一般的な方法としては,①自筆証書遺言,②公正証書遺言,③秘密証書遺言の三つがあります。
自筆証書遺言の場合,遺言者が遺言の全文を自筆することが絶対条件です。
遺言の内容だけでなく,日付及び署名も必ず自署でなくてはなりません。
平成30年の相続法改正により,自筆証書遺言に添付されるべき財産目録については,直筆でなくても良いことになりました。ただし,財産目録の全ページに遺言者が署名・押印することが必要です。
遺産が多数ある場合,財産目録を直筆で作成するのは非常に手間だったのですが,この改正により,財産目録自体はパソコンで作成することができるようになりました。また,この改正により,預貯金通帳の写しや不動産の登記事項証明書等を財産目録の一部として添付することも可能になりました。
平成30年相続法改正の一環で,法務局における遺言書の保管等に関する法律(遺言書保管法)が新たに制定されました。これにより,自筆証書遺言を法務局で保管してもらうことができるようになりました。
従来,自筆証書遺言は,遺言者が自宅で保管していることが多く,紛失,無断閲覧,改ざん等のリスクが避けられないものでした。しかし,新たに制定された遺言書保管制度により,これらのリスクを避けることができるようになります。
また,この制度に基づいて保管されている自筆証書遺言については,家庭裁判所による検認の手続が不要とされることになりました。
公正証書遺言は,公的な資格を有する公証人が作成し,作成後は公証人役場に保管されますので,作成の際に間違いが起こる危険性が低く,作成後に変造される危険もほとんどありません。
遺言の効力が問題となることがほとんどありませんので,しっかりとした遺言を残したい方には一番おすすめの方法です。
自筆証書遺言の場合と異なり、署名・押印さえ遺言者が行えば、パソコンで作成してプリントアウトしたものでもかまいません。
公証人が作成に関与しますが、公証人役場が保管するのではなく、遺言者がみずから保管します。
遺言の内容には、書いたことによって法律的に効力を有する事項と、書いても法律的には無効である事項があります。
法律的に効力を有する事項は、法律によって定められており、それ以外の事項は書いても道義的な効力しかありませんが、書いたことによって相続人が事実上尊重するということはあり得ます。
遺言で定めておくことにより効力を有する事項のうち代表的なものには、以下のような事項があります。
特定の相続人に対して特定の財産を承継させる場合について,公証実務では「遺贈」ではなく,「相続させる」旨の遺言が作成されてきました。
遺贈の場合,登記をするに当たって共同相続人との共同申請が必要となり,また農地法の許可が必要になるなどの問題があったため,公証実務上の工夫として「相続させる」旨の遺言を作成する実務慣行が確立されていたのです。
この「相続させる」旨の遺言については,その法的性質や法的効果について見解の対立が生じていましたが,最判平成3年4月19日・民集45巻4号477頁は,「何らの行為を要せず,被相続人の死亡の時にさかのぼって直ちに当該遺産がその相続人に相続によって承継される」と判示しました。
したがって,遺言書の作成に当たっては,特定の財産を特定の相続人に承継させたい場合,「相続させる」との文言を用いるのが通常です。一方,相続人以外の第三者に承継させたい場合には,上記の意味での「相続させる」旨の遺言をすることはできません(遺贈の方法によることになります)。
平成30年の相続法改正により,いわゆる「相続させる」旨の遺言の場合であっても,法定相続分を超える部分については,登記等の対抗要件を備えない限り,第三者に権利を主張できないこととされました。
今後,遺言を作成する場合には注意が必要です。
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